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舞台『NOISES OFF』観劇記録

いつでも『NOISES OFF」』のことを思い出せるように。千穐楽から2ヶ月近くかけながら(ただただ遅筆)少しずつ思い出を辿るように書いた記録兼感想ブログです。

『NOISES OFF』について

概要

「NOISES OFF」は、イギリスの劇作家マイケル・フレインによって1982年に書かれたシチュエーションコメディ。この作品は作者自身が書いた別の喜劇を、彼が舞台袖から見ていた際、前(客席) から観るより、後ろ(舞台裏)から観た方がより面白く感じたことが誕生のきっかけ。
マイケル・ブレイクモアの演出により、ロンドンのリリック劇場で初演。開幕したその夜に大評判となり、短期間でウエストエンドのサヴォイ劇場へ移行、1987年までのロングランとなりました。イブニング・スタンダード・アワード最優秀コメディー賞を獲得。
N.Y.ブロードウェイでも1983年、ブレイクモアの演出によりブルックスアトキンソン劇場にて上演。翌年、トニー賞4部門にノミネート。また2001年のリバイバル版はトニー賞2部門にノミネート、ブルック•アシュトン役のケイティ・フィナーランが演劇部門助演女優賞を受賞する快挙となった作品です。1992年にはピーター・ボグダノヴィッチ監督により映画化(日本未公開、邦題「カーテンコール/ただいま舞台は戦闘状態」で映像あり)。その後もウエストエンド、ブロードウェイはもちろん、世界各地で繰り返し上演され、愛されてきた傑作です。
日本でもたびたび上演されてきた本作。今回演出を手掛けるのは今をときめく森新太郎。戯曲を鋭く緻密に読み解き、執念ともいえる演出で知られる森がこの戯曲をいかに調理するのか、乞うご期待!(公式HPより)

あらすじ

舞台『ナッシング・オン(何事もなし)』本番前夜。深夜にまで及ぶ舞台稽古。役者たちはいまだ段取りも掴めず、舞台監督は連日の徹夜でふらふら。そこに呆れた演出家のダメ出しが飛ぶ。混沌とする舞台上……。はたして無事に初日を迎えることが出来るのか?
1ヵ月後の地方公演。役者同士の喧嘩が勃発。そこへ久しぶりに姿を見せた演出家。だが、彼はなぜだかこそこそとしている。複雑に絡まる恋愛模様が大変な事態を巻き起こしていく。
さらに2ヵ月後。いよいよツアーの千秋楽を迎える。舞台裏から役者同士が喧嘩する声が聞こえる中、アナウンスが流れ……『ナッシング・オン(何事もなし)』の最後の幕があがる……。

キャスト・スタッフ

藤井流星/ロジャー・トランプルメイン役:若手ながらプライドが高い。
羽野晶紀/ミセス・クラケット役:天然で忘れっぽい大ベテラン。
平 祐奈/ヴィッキー役:若くて未熟だからか、空気が読めない。
葛山信吾/フィリップ・ブレント役/シャイフ(アラブの首長)役:暴力と血を異常に恐れている。
紅ゆずる/フレイヴィア・ブレント役:明るく陽気で分別のある女性。
山路和弘/泥棒役:大ベテラン俳優。アルコール依存症
伊礼彼方/演出家:怒りっぽく、高圧的な面も
福本伸一/舞台監督。働きすぎで、どこか抜けている。
小南満佑子/舞台監督助手:感情的で敏感な性格。

演出:森 新太郎
翻訳:小田島恒志

スケジュール

2023.11.4-11.12 森ノ宮ピロティホール(大阪)
2023.11.16-11.29 EX THEATER ROPPONGI(東京)
2023.12.4-12.19 キャナルシティ劇場(福岡)

上演時間:約2時間50分(休憩1回含む)

◆ 観劇日:11/20東京マチソワ、12/4福岡マチソワ

構成(個人的備忘録)

1幕 初日前の舞台稽古(現実に準えて、森ノ宮ピロティホールという設定)

劇的なトランペットのメロディが響くBGMの後、電話ベルの音と共にちょっと安っぽい(すみません)緞帳が上がる。

セットは2階建ての家の居間を模しており、1階は上手からバスルーム、女中部屋、玄関のドア、(間にガラス窓)、書斎のドアと4つのドアが並び、中2階にまたバスルームのドア、2階は下手からリネン室、寝室、屋根裏?への入り口と並ぶ。

福本伸一さんポストより:https://x.com/shinkorochan/status/1733777152485773599?s=20

晶紀さんがお皿に乗ったイワシを持って登場しお芝居が始まるも、客席後方に座る演出家伊礼さんがガナリでダメ出しを入れはじめ、舞台稽古の様子が少しずつわかってくる。稽古は2週間だけで、劇場入りも色々あって(後で舞台監督の福本さんがセットを後前逆に組んでしまったというセリフあり)、場当たりすっ飛ばしていきなりゲネプロ、明日(というか既に今日)初日という日の深夜。どうにか全て通そうする演出家と、一筋縄では行かない役者たち。

声がめちゃくちゃ良いけど皮肉っぽくて偉そうな演出家の伊礼さん。(実際の人となりはそうじゃないってわかってますがあまりにも貫禄がありすぎた。さすが。)

忘れっぽいけど天然なところも可愛い晶紀さん。

「アレやん?!」しか言わないアレな若手俳優、流星。実は晶紀さんと良い感じ。

暇さえあれば化粧を直し髪を梳かし、セリフは棒読みだしコンタクトレンズもすぐ落とすけどずっと可愛い祐奈ちゃん。「エ?なんて?」

一番しっかりしていて押しの強い美人なゆずるさん。(あと色恋沙汰にも敏感で情報通なとこ、好き)「アタシ、場当たりってだ〜〜いすき!」

セリフや芝居が腑に落ちないと進めない人で、暴力的な言動にふれると鼻血を出したり失神しかけたりする葛山さん。

かつては名優の大先輩だった(っぽい)が今ではアルコール依存症でとぼけまくりな山路さん。

セットを後ろ前に組んでしまい48時間寝ていない、押しに弱めな舞台監督の福本さん。「ハイ!」

気弱そうで落ち着きのない舞台監督部助手の小南ちゃん。喋り方と姿勢のクセ強。

役者陣は役の衣裳として決まっていたのか宣伝ビジュアル時と同じだったけど、スタッフ陣がリアルな感じに変わっていた。福本さんはHAIYUZA THATERのTシャツ(大道具は俳優座劇場さん製作なので)で、雪駄も履いてた?助手の小南ちゃんは「何事もなし」のイラストが入った黒いスタッフTシャツという細かさ。好きです。

 

劇中劇『NOTHING ON(何事もなし)』は、免税のため海外で暮らしているフィリップ・ブレント(葛山)と妻フレヴィア(紅)が所有する家が舞台。それぞれの登場人物が、この家には誰もいないものと思ってやってくることから始まるコメディ。この家の家政婦トランブルメイン(羽野)は自分の勤務時間は終わり普段なら帰るが、ロイヤルなんたら(競馬?)をテレビで見るために家に残りイワシの缶詰を料理している。この家の不動産屋のロジャー(藤井)は彼女とイチャつくために自分の家と偽って勝手に上がり込む。その彼女ヴィッキー(平)は税務署勤務でブレント夫妻の脱税を調査中。そして海外に暮らしているはずのその夫妻も結婚記念日に合わせてこっそりと家に帰ってきて、泥棒(山路)まで忍び込む。

誰かがドアの向こうに消えてはまた新たな誰かが出てきて、お互いの存在には気づかないまま、何かがおかしくなっていく。最終的には全員鉢合わせとなった後、フィリップにそっくりなシャイフが突然現れてこの家を買いたいと申し出るも誰も信じず、泥棒が実はヴィッキーの父親だったことが判明し、1幕が終わる。(ドタバタ部分を全て端折った説明ですみません)

会場に貼られていた NOTHING ONのポスター

何より今回の一番の仕掛け(演出?見どころ?)は、俳優役/劇中役の二重構造を、本人役/劇中役にし、本人役の時は伊礼さん以外みな素に近い関西弁で喋ること。(併せて流星さんは劇中役のときは眼鏡をかける)。方言というある種の言語は、こういう風な使い方ができて、こういう風な効果を生むのだというのが本当に面白かった。

そして、プログラムで翻訳の小田島さんがおっしゃっていた、この脚本で多用されているダジャレのような英語の韻の踏み方の日本語表現への言い換え。ラストの「イワシを頭から「ぱく!」と「幕!」も原文だと"Sardin!"(イワシ)と"And curtain!"(幕)。あと面白いな〜と思ったのは、山路さん行方不明騒動の時に福本さんが「(泥棒の衣裳が見つからなくて)衣裳部屋でチビるかと思いました」と言ったのを山路さんが「地ビール?」と聞き間違えるところ、原文だと"Gear"(衣裳)と”Beer”がかかっていたんですね。

流星さんのセリフは原文だと"You know (what I mean) ?" に当たるところが「アレやん」「アレでアレでアレやん?!」になってるんですが、本人のカラーもあるのか原文から感じる鼻につくプライド感よりもなんだかアホっぽい愛おしさが勝っててたいへんにアレでした。(役作りと違う方向の解釈だったら申し訳ないな…)

なぜか地味に好きだったセリフはヴィッキー(祐奈ちゃん)がフレヴィア(ゆずるさん)に対面した時の「債務者(?うろ覚え)の被扶養者たる妻!」です。下着姿かつ棒読みセリフで専門用語を言うのがツボで。

 

そんなこんなでどうにか通し終え、流星くんと晶紀さんが良い感じな一方、伊礼さんが祐奈ちゃんと小南ちゃん両方に手を出していることがわかったところで色んな意味で1幕終了。情報量が多いし、もうすでにこの時点で一生分笑ってる。

休憩中

休憩ラスト5分くらいで緞帳が上がると、セットが180度回転していて裏側に。

それぞれのドアの裏にはどれがどの部屋のドアの設定かわかるよう白ビニテで「キッチン」とか「女中」とか書いてあって。

大概パネル裏に天地とか合番とか上下とか色々書き込むものなんですが普段見えちゃいけないものが全部見えるってなんだかソワソワしますね。材料に「バラさない」とか書いてあるのはガチなやつだったのかな。そして小道具置き場に袖水、鏡などなど。

パネルの各所に黄色いラベルシールが貼られていて、「何事もなし」と書かれていたのが細かくて好きでした。工場でどの現場のセットか分かるように貼るやつ。実際に書くのなら「NOISES OFF」だろうから、あえて貼られてるのかなあ、と勝手に想像した。

あとは表からだとそれぞれの部屋の見込みのパネルか幕かなんかがあるはずだけどそれは色々見えなくなっちゃうのでカットされていた。

……みたいなどうでもいい観察を、休憩の終わりにしていました。

2幕 2か所目の舞台裏(六本木EXシアター)

ツアー2ヶ所目の開演直前。

晶紀さんと流星くんの喧嘩、伊礼さんを巡る祐奈ちゃんと小南ちゃんのキャットファイトが差し込まれ、1幕と同じ『何事もなし』の劇が進行するもいろんなトラブルと事件が舞台裏で起きていく。お客さんが入っている舞台裏というわけで大きな声は出せないためにひたすら表情とジェスチャー。それがさらに面白さを倍増させていく。

個人的には流星くんの冒頭の出番、いろんなドアを開けるくだりのたびに舞台裏の様子(晶紀さんが他の男性陣とくっついてる)を発見してしまい怒るもゆずるさんに打ち返されて表で芝居を続けるシーンが大好きでした。(伝われ)あと「どーんとぱにっく! どーんとぱにっく!」

流星くんもめちゃくちゃ走り回るんだけどおんなじくらいゆずるさんも走り回っていた印象。祐奈ちゃんのきっかけを出し、小道具を手渡し、流星くんを妨害し、早替えを手伝い、酒瓶を隠し、山路さんを探し回り……本当にありがとうございます。

後々伊礼さんもおっしゃってたんけど、流星くんがイワシを晶紀さんの頭に落とすシーンで客席から「あぁ…(そんな…)」みたいな悲鳴に似た声が上がるのがリアクション良すぎて面白かった。そこから流星くんのおかしな方向にギア入っていく感じ、見ていてとても楽しかったです。悪い顔してノリノリになったり、サボテンで攻撃したり、斧振り回したり。

斧といえば、流星くんが斧で葛山さんに襲いかかり晶紀さんゆずるさんがが間に入って取っ組み合うシーンがあるんですが、ある回では勢い余って斧が客席に吹っ飛び、ゆずるさん晶紀さんが華麗に客席におりて回収する一幕もあり。生の舞台ですね。

あと好きだったのは伊礼さんに詰められて「いいえ!……ア、はい!」を連呼する福本さん。

各所で言われていたように台本もややこしい二段構造になっていて、原文は左側が舞台裏、右側が表で進行している舞台の内容が書かれて進んでいく。舞台裏のト書きの多いこと。

なんとか幕まで漕ぎ着け、BGMが流れるなか実際に舞台スタッフの方が出てきて見せ転で装置転換が行われ、3分割くらいになった家のワゴンがぐるりと回って1幕と同じ表に戻っていく。セットが正面に戻ったところで一旦幕がおりて最後に緞帳前に酒瓶が置かれるんだけど、ちゃんとBGMのタイミングに合わせて置かれる細かさが愛おしかった。

3幕 3ヶ所目 大千穐楽の日キャナルシティ劇場)

ようやく3ヶ所目、最後のツアー地で最後の公演。またあの劇的なトランペットのメロディが流れ緞帳が上がろうとするも途中で止まり、戻り、またBGMが流れ、緞帳が途中まで上がり……と繰り返す。また女性陣の中でキャットファイトが起こっているらしい。舞台監督の福本さんが出てきて事態の収集を図っています、と説明する裏で上がる怒号。ちなみに、福本さんがそのまま先ほどの酒瓶を回収するんですが、福岡初日は瓶を置き去りにしてしまい、幕が上がると同時に「忘れてたあ〜〜!!!!」と上手から走り込み回収し下手に走り去って行くという場面がありました。生の舞台ですね。

『何事もなし』の劇が始まるも、晶紀さんがキャットファイトの結果足を負傷し引き摺りながら出てきたり、先に鳴っているはずの電話のベルSEがなかなか鳴らなかったりと、少しずつ段取りが狂っていく。2幕は狂いながらもどうにか最後までやり切ったけれど、3幕はもはやいてはいけない時にいてはいけない人が出てきたり、もうどんどん収集がつかなくなっていく。その中でもゆずるさんはどうにか芝居を続けようといろんなアドリブを突っ込んでいく一方で、祐奈ちゃんはひたすらに棒読みで同じ芝居を続けていく。コンタクトレンズもなくす。もうカオス。

そして終盤、1幕で泥棒の入りのきっかけを確認していたのと、山路さんが失踪した時のために泥棒の衣裳のスペアを用意するという伏線ががここで回収されて、きっかけのセリフが繰り返されどんどん泥棒(福本、伊礼、山路)が出てきてしまうという最後の畳み掛け。3人揃って泥棒のセリフを言うところがこの舞台のシーンの中でも一番好きなんですけど、何回見てもこのオチが来るってわかってるのに初めて観た時以上に笑っていました。あまりにも天才的。

もうどうしようもなくなった結果、またもやゆずるさんのアドリブで泥棒で出てきた伊礼さんはなぜかソーシャルワーカーとなり、皆はこの劇のキーワードだった「ドアとイワシ」「電話と警察」「箱とカバン」を皆連呼しながら走り回り、いろんなものを投げ合ってはちゃめちゃになり。どうにか「幕!」で幕を下ろすも途中で止まってしまって、流星くんが引っ張るとなんと振り落としで幕ごと落ちてきてみんな巻き込まれ、終幕。ここまでくると客席は笑い疲れを越してみんなハイになってる感じでした。

カーテンコールでは曲に合わせて皆さんが踊りながら出てきて、日替わりのちょっとした振付タイムもあり。東京で観た回は流星さんがええじゃないかとズンドコパラダイスの振りをしていたり。ダブルアンコールの後、挨拶があり、その日のハプニングのことや、客席のリアクションのことなどをお話し。

最後は中央の玄関の扉から皆さんハケるのだけど、最後にハケる流星さんに向けてゆずるさんがイタズラしたり、流星さんは素に戻ってピースとかするから客席から悲鳴が上がったり、楽しく愛おしい時間でした。

ハマりすぎて福岡まで行った話

すっかりこの作品のファンになりもう一度観たい気持ちが膨らむも、仕事が詰まりすぎて唯一予定をこじ開けられそうだったのは12月4日。そう、福岡公演初日。西日本のド田舎出身の人間がわざわざ東京で働いて暮らしている理由、行きたい舞台(現場)にすぐ行けるように、なんですが。色々と元も子もない。

そもそも東京公演もFC先行で当たっていたマチネだけ行く予定だったのを、流れてくる感想に「リピートアリかもな〜」と観る前から言っていたら、先に観たFFさんから後押しされ結局ソワレ当日券確保しマチソワ観劇した私。普段の舞台でも2回観るのはよっぽどのことで。

約1週間ウダウダと悩んだあと(と言いつつ多分ほぼ気持ちは固まっていたのを悪あがきしていただけ)、今この瞬間しか観られないものを観るために生きてるんだと開き直り。せっかく行くなら2公演観ようと、4日の朝福岡へ飛びマチソワ観劇後福岡泊。翌朝東京へ戻ったその足で出社するという強行スケジュールを組みました。まだまだ元気なヲタクやってますね。

結果的には合間に太宰府天満宮へ行ったり博多ラーメンを食べたり、これ以上ないくらい充実した1日になりました。過去10数年いろんなヲタクをやっていて一番楽しかった遠征は友達とテニミュを台湾まで観に行ったことだったんですが、なんだかそれに迫るくらいただただ楽しくて幸せな時間でした。これも全て『NOISES OFF』のおかげです。本当にありがとうございました。

伊礼彼方の部屋

伊礼彼方の部屋vol.12~山路和弘×紅ゆずる×伊礼彼方~――アレがアレやからアレになった宴――

2月13日、全公演終了後に生配信。2時間以上あってアーカイブを追いかけて急いで聴いたので抜けてるところもたくさんあると思います。参考までにお願いします……

藤井流星さんについて

伊礼さん>『NOISES OFF』チラシの演者を見てWEST.の誰かが「お前めっちゃ良いメンバーに支えられてんな」って言ってたって流星が教えてくれて、それが嬉しかった。

山路さん>(流星さんの)真面目さに涙が出そうになるくらいやった。走り方とか。「流星は引くほど真面目。熱い。」2幕裏で台詞を表情無しに喋っているときの表情が本当に愛しくて泣きそうになった。酸素ボンベ吸ってる姿がダースベイダーみたい。

ゆずるさん?>セリフを全部入れてきた時はびっくりしたよね。

伊礼さん>稽古場にギリギリで来るので注意しようかと思ったら、早めについて駐車場の車の中でマネージャーさんとセリフ入れる練習をしていた。

色々アドバイスもしたけれど、素直。セリフのやり取りをもっと会話みたいにしてみようと言ったらすぐ反応して変えてくれた。そういうマインドが好き。

ゆずるさん?>伊礼さんと流星くん、師匠と弟子みたいだった。

・稽古や演出のこと
普段の舞台の客層とは違う、流星のファンが多くきてくれている。素直な反応が多かった。客席で伊礼さんをガン見する観客がいた。

ドスを効かせすぎて初日客席が引いた。このままではコメディにできないので、元々地声で「2度とこういうことのないように」と言っていたのをマイクを通したり、他の場面も低音はやめて、ちょっとコメディ寄りの高めの声の出し方に変えた。

森さんは本当にお芝居が好きな人。稽古中も休憩を取らずずっと考えているくらい。ご自身でひととおり全ての役を演じてみてから演出をつける。(個人的衝撃ポイント)

稽古場で1ヶ月稽古した後に大阪で小屋入りして舞台リハが始まったが、稽古場と距離感が変わってポジションをいじり始めた。伊礼さん、勘弁してくれと思った(笑い話テイストで)

この座組はみんな素直だし、森さんは役者からの意見をきちんと受け止めてくれる。

伊礼さん的に最後まで解釈が違うと思っていたところは、コンタクトレンズを受け止めるのか祐奈ちゃんを受け止めるのか。伊礼さんや流星くんは祐奈ちゃんを受け止めると解釈していた。

頭に叩き込むために稽古場で順番に千本ノックをやった。流星くん→祐奈ちゃん→小南ちゃん→晶紀さん(ゆずるさんと山路さん伊礼さんは1回のみ?で終わった)

原作の脚本は言葉遊びが多く、小田島さんがいろいろ苦労されて訳されていたので、山路さんがアドリブで入れている「わしは酒を肴に飲むタイプだけどな」がウケて悔しいと言われた。

伊礼さんはノート(ダメ出し)をもらうことがほぼ無く物足りなさを感じていたところ唯一言われたのが福岡2公演前くらいの時、役者の声を聞きすぎていると葛山さん、福本さんから言われた。嬉しかった。

他にも御三方がこれまでやってこられたお芝居のこととか役柄のこととか、たくさん面白いお話をしてくれてたのですが記憶力の限界でした。もっと真面目にメモ取りながら観ればよかった。休憩になると女性陣が集まってお喋りしてたエピソードとかもあった。晶紀さんは手を繋いできたりするらしい。仲良しすぎ。思い出したら追記するかも。

藤井流星さんのこと・作品のこと

2023年秋クールでドラマ『18歳、新妻、不倫します』が放送されている期間に、この「藤井流星」役を初主演舞台で走り抜いた藤井流星さん。話を聞いてる感じ、『新妻不倫』を短期間で撮り切って途中から合流した感じだったのかな。それにしても本当に驚いたのは流星さん、映像のお仕事もたくさんやってるしWEST.では新喜劇(?)もやってるけど、舞台経験としてはドラマ「正しいロックバンドの作り方」の続編舞台、朗読劇(ハロルドとモード)で、そこからこの約3時間走り回りっぱなしのややこしいコメディが初主演舞台と。

この事務所……(言い換えが一生難しい)のグループを推すようになってから度々びっくりするけど、本人の経験やこれまでの実力よりも数倍大きな役柄をポンと任せたりする。プロから見ればできる可能性があるからキャスティングしてるだけなのかもしれないけど、素人目には大胆なことするなあと思うし、それに対してきっちり応える彼らを本当にすごいなあといつも思います。

推し・贔屓という文化はもちろんどの界隈でもあるし2.5次元なんかも俳優さんによってはすごい熱量の人気で出演舞台の客層にファンが多い時もある。でもこの事務所……に所属している方々が出演する舞台、特に主演舞台の空気感はまた全然違う気がします。主演目当てのお客さんがほとんどという状況。それが悪いと言いたいわけではなく、より一層主演を務めることは大変なプレッシャーだし、周囲の動き方もちょっと変わってきたりするんだろうな、と。(話はちょっとズレるかもだけど、今回だと物語の本筋ではないところの流星さんの動きに笑いが起きる、とかもあった)

いずれにせよ私だって藤井流星さんが主演をやらなければ、これまで日本でも何度も上演されていた『NOISES OFF』というこんな最高に面白い作品に出会えることはなかったんです。どんな舞台だって観客の目的は人それぞれあるけれど、観客が舞台上で起こる出来事にどんどん引き込まれ、劇場が笑いに包まれ、客席と舞台が一体になったと感じられる瞬間がこの作品にはあって、そんな舞台の醍醐味みたいな贅沢な時間を味わえたことが本当にとても幸せでした。

森新太郎さん演出は2022年10月の『ヴィンセント・イン・ブリクストン』が初めましててで、2023年2月の『バンズ・ヴィジット〜迷子の音楽隊』も拝見したところでした。そもそも作品自体の性格もあるだろうけれど、ささやかな感情の機微の尊さを描く一方で、諸行無常というか"Life goes on." 的な淡々とした雰囲気も横たわるのが印象的で。
そんな森さんが演出されるコメディ。ご本人も書かれていたように、『NOISES OFF』には何がなんでも進もうとするエナジーに満ちていた。一方でもはや自分の手には負えない大きな流れの中に巻き込まれている不条理さ。”Show must go on.” だがしかしどうやって進めていけばいいのか。それは時折自分の人生と重なるようで。

いつだって今この瞬間しかない関係性だけれど、だからこそ、面白くて尊い。舞台と客席、一から関係性が積み重なって、少しずつ空気が溶け合って、人生が交わっていく。舞台の面白さってこういうところだよなあ、と改めて思わせてくれた作品でした。

そして、エンタメが溢れかえり次から次へと消費していってしまう現代で、一つの作品をこれほど愛せることもまた贅沢で幸せな時間だった。狭く深くのオタクなので原文の脚本も買い求め、読み込むのもとても楽しくて、良き思い出となりました。

一応、私が原文として当たったバージョンのリンクを貼っておきます。3-4日で発送とか言ってるけど2週間近くかかった。>>Noises Off (Modern Classics)-Amazon

プレイリスト

印象的な曲たちのメモ。聴くだけで舞台の風景が浮かんできて懐かしい気持ちになれるので、ノイオフロスに効きます。全て1950年代〜のジャズ・トランペット奏者 Al Hirtの曲。

How Deep Is the Ocean:幕開きのトランペットのメロディが印象的な曲

How Deep Is the Ocean

How Deep Is the Ocean

Tansy :幕を降ろす時の曲

Tansy

Tansy

  • アル・ハート
  • ジャズ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

・ Fancy Pants:カーテンコールで踊りながら出てくる曲

Fancy Pants

Fancy Pants

  • アル・ハート
  • ジャズ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

★番外編:WESTube 楽屋ルーティー

今でもたまにみては癒されています。