rit.

好きなことを好きなだけ、ゆっくりと穏やかに。

舞台と客席で紡いでいく物語

THE GREATEST SHOW-NEN 舞台『ガチでネバーエンディングなストーリぃ!』大千穐楽おめでとうございます! 今のAぇ! groupにしかできない、Aぇ! groupの魅力の詰まった舞台で、この瞬間に立ち会えて幸せでした。

以下、とりとめもない感想と雑多な備忘録を。

ストーリぃ!はラスボスとの戦闘シーンからスタート。ゲームのキャラクターよろしく上下に細かく揺れる6人がコミカルで可愛い!が第一印象。戦士の佐野さんが先陣を切り一番にダメージを受け、それに回復用の薬草を投げつける僧侶正門さん。リチャくんは格闘家で物理技を繰り出し時々外したり、ギャンブラー大晴くんはサイコロの目で技の威力が決まったりと苦戦しつつも、魔法使いの小島さん、勇者の末澤さん、6人の力を合わせ、無事にラスボスを倒し世界は平和を取り戻す。

目的を達成した勇者たちはその後どうするのかといえば、元通りの日常を送るべく、元いた場所に帰る流れに。(ドラクエとかFFとか仲間と冒険するゲームをやったことないんだけど、この辺りって実際どうなるんですか?)みんなお疲れ様!またな!という流れを勇者ユウヤは引き留め、せっかくここまで一緒に冒険してきたんだから打ち上げをしようと提案する。

しぶしぶ残りつつもなんやかんやと、終わったからこそ言える愚痴やイジリを発端とする喧嘩が勃発(ここはとてもエチュードっぽい感じ)。回復用の薬草は歯に挟まるから嫌だったんだけど、と始まる戦士と僧侶の争い(個人的には薬草でしか回復できないことに文句を言うあたり、とても佐野さんらしいな……と思った)、ギャンブラーに対して、銭を投げるってどうなん? と言う小島さんのツッコミ。(ギャンブラーは腰掛けて話す時の足の組み方とか、ちょっとした仕草もちょっと気取ってかっこつけてて、それがとっても大晴くんらしくて愛おしかったな。)

格闘家の必殺技いじりではリチャくんのキレ芸が遺憾なく発揮されていた。ここが日替わりで、私が見た回の技名は「血まみれファイナルアンサー」でした。(自分で自分の胸を掻きむしった血で目潰しした隙に攻撃するらしい。怖すぎ。) あとは勇者はなんで力を溜めるターンが必要なのか、魔法の呪文がキショい。などなど……

ゲームらしくこれまで手に入れたアビリティもあって、そこにはこれまでの番組で培ってきたスキルの数々が並んでいて。「パントマイム」「みんなで歌う」「100手」「幡多弁」……その流れで佐野さんが100手を披露したり、みんなで歌を歌ったり。

佐野担の端くれなので、佐野晶哉さんの100手を生で見られて嬉しかったな。今回は刀ではなく斧が武器だったので、それに準じた動き方や重力の表現で、沖田総二を演じた時とはまた違うものになっていて感動した! 殺陣って本当に武器になると思うので、是非これからも観られる機会がありますように。あとはやっぱり舞台歌唱を生で聴けてとっても嬉しかったなあ。伸びやかできれいな歌声で、素敵でした。

それからまた些細なことが喧嘩につながって文字通り団子状態に絡まる勇者以外の5人。(それを解く勇者こと末澤さん、大晴くんを解きながらぼそっと言った「無理して絡まってんなあ」が最年長出てましたね。)

落ち着いた6人はこれまでの思い出のダンジョンの話で盛り上がる。眩しすぎた光の宮殿、ベチャベチャの沼、短きダンジョン、空飛ぶドラゴン(名前忘れました。ごめんねドラゴン……)、海の果てに行き着くと謎の透明な壁(なんだか「トゥルーマン・ショー」を思い出した)、全然捕まえられないうさぎ(ことリチャード、これはアリーズinAぇ! ワールドのオマージュ?)。セットはセンター奥のパネルが田楽返し(床も一緒に動いてたからちょっと違うかもしれないけど)になっていて、都度都度そのシーンのセットがテンポ良く出現する仕組み。

夜も更けてユウヤ以外の5人の日常の話に。戦士は彼女にプロポーズする予定で、魔法使いは9人兄弟の次男、格闘家は師匠の祖父に報告しに、僧侶は皆同じような格好の僧侶一家のところに、ギャンブラーは実は元は羊飼いだからおばあちゃんと羊が待っている(はちゃめちゃ設定すぎて面白い)……皆それぞれに帰る場所があり、待っている人がいる。駄々をこねる勇者ユウヤを無理やり引きずってエンドロールへ突入し、一人一人がそれぞれの故郷に帰っていく演出と、流れるスタッフロール。

最後のHappy Endの文字にそれでも終わらせたくないユウヤは、もう一度アビリティ「みんなでうたう」で皆を呼び寄せる。

 

集められた5人はここで急にメタくなり、ここが<GREATEST FANTASY>というゲームの世界であること、自分達は決められた役割をこなすNPCであること、勇者ことユウヤはもうこのゲームを何十回とプレイしていることはわかっているのだと切り出す。なんでこんなにも終わらせたくないんですか? という5人からの問いに、語り始めるユウヤ。これまでゲームばかりやってきて大学でもパッとせず就活もあまりうまくいかず、明日が第一志望の最終面接。でもそこは圧迫面接と言われていて怖くて夜通しゲームをやっていたのだ、と。(ここで、終わらないストーリーはゲーム内ではなく現実だという展開に、そっちか〜〜と唸った。)

それならここまできたのだから最後まで付き合おう、と前向きな空気になったところで突如フリーズする勇者(止まったままでいなければならず、他の5人にされるがままの末澤さんタイム、不憫かわいかったな)。これは現実で寝落ちしているんじゃないか、最終面接に間に合うように起こさないと!と5人の新たな冒険が始まり、ネバーエンディングなストーリぃは第二の局面に突入する。

セーブポイントを通じて現実世界に向かう場面は、第10回公演『HAPPY ENDie』で挑戦したパントマイムで表現されていて、改めて本当にAぇ! groupってなんでもできるなあ、としみじみ思った。(余談ですがSnow Man主演の滝沢歌舞伎を初めて観た時もおんなじことを思ったのを思い出しました。なんでもできちゃうのがジャニーズエンターテイメントなんだなあ。)

なんとか無事に出てきた5人だけれど、二次元(電子世界)からやってきたために乗り移った先は電子機器。ここで、僧侶アレックス→アレクサ、格闘家ルンダ→ルンバ、魔法使いスタッド→電気スタンド、ギャンブラージャイロ→アイロン、戦士オースター→トースター、と名前と重ねてきたことに気付かされる。悔しい。それぞれが頑張って起こそうとするけれど、例えばルンバは安全装置が付いてて勢いよく激突できない、といった感じであんまりうまくいかない。(でもまあ起こすには気合いっしょ!と他人事みたいなこと言う電気スタンド、ただの小島健さん本人でしたね。)それにしてもステージの中央で寝ているユウヤと、家電の5人のアテレコが響く空間、非常にシュールだった。

この光景のままどう進むんだ、と思っていたら家電の着ぐるみを着た5人が登場してお腹捩れるくらい笑いました。手足がうまく動かせない中頑張って歌って踊ってる姿がどうしようもなく愛おしいと同時にどうしようもなく面白くて。対談で話してた着ぐるみってそこなん?! という驚きやら、ルンバの裏側までちゃんとしている造形の細かさへの感動やら、この辺りから情緒が本当に行方不明です。

5人の奮闘の甲斐あり目を覚ましたものの、躊躇うユウヤを励ます応援ソング、これが佐野さん作詞作曲なんですかね……? 最初はユウヤを励ますために5人だけが歌って踊っていたところに、覚悟を決めたユウヤこと末澤さんが加わった時、なんだかうまく言えないけれどやっぱりこれが完成形なんだ、と思った。見た目のパフォーマンスのバランスも、歌声のバランスも、最後のピースがハマるみたいにぴったりで。パンフレットの対談の中でも末澤さんのことをAぇ! groupの救世主だと言っていたけれど、本当にそうだなあと。(ただまあ5人は家電着ぐるみ姿のままなのが本当になんとも言えずシュールでした。素敵な曲なのでまた普段から歌ってくれる機会があったらいいな)

日替わりのもう一つ、正門アレックスのアビリティ「鉄の心」。スベっても平気なくらいの鉄の心を手に入れた、という設定なのでアレクサの姿で披露される正門さんのギャグに観客は笑ってはいけないという新しいパターン。私が見たときのギャグはちょっとわかりづらくて(笑)正門さんの解説が入り、それに対して客席も「あ〜(納得)」という反応でもうこれはギャグとして成立してない状態だったんだけど、逆にそれが面白くて笑いを堪えるのが大変でした。客席一体型の正門劇場、ちょっとソロコンを思い出したな。

そんなこんなあり、実は第一志望は<GREATEST FANTASY>を作った会社だというユウヤを送り出し、ゲーム世界に戻った5人。がなんとそこには裏ボスが。同時並行で面接でも<GREATEST FANTASY>の話になり、裏ボスを知らされるユウヤ。「何回もプレイして全部わかってるっていうけど何も知らないんじゃん」と詰められるユウヤと、裏ボスに追い詰められる5人。そこで突如光りだしたユウヤの鞄の中から出てきたのは、ゲーム内にのアイテム・クリスタルの形をしたマイク。アビリティ「しゃべるようにうたう」ってそういうことか、そんな無茶な(笑)という客席の空気は、ヒプノシスマイクよろしくラップで攻め立てていく末澤さんの熱量にぐいぐい引っ張られていった。本当にずるいなあ。

面接を終えピンチの5人の元に駆けつけたユウヤ。裏ボスを倒し、最終面接の合格の電話も入り、本当のハッピーエンド!……が、ここでもまたストーリぃは終わらず、カーテンコールの途中で急にAぇ! groupの末澤誠也になって「ネバーエンディングっていうからには終わったらあかんやろ」と切り出す。(「急に関西弁強いな〜」と観客の声の代弁者は佐野さんでした。) ネバーエンディングとうたっているのだから終わったらだめじゃないのか。いや舞台には終わりがある。でもAぇ! groupは続いていくから、Aぇ! groupこそが『ガチでネバーエンディングなストーリぃ!』そのものなのだ、と続ける6人。つづいての挿入歌は現実への葛藤と未来を目指すような、ここまでの舞台・ファンタジー感のある歌ではなく、Aぇ! groupや観客の私たちに近づいた歌で。

なんだか素面で、Aぇ! groupこそが終わらないストーリーなんだ、と言われるとちょっと照れくさいなとなってしまうところだけど(すみません)、ここまで、Aぇ! groupという終わりのない物語を生きる中で着実に手に入れてきたもの=アビリティ、経験値、そしてなにより6人の関係性というもの、を余すことなくぶつけられた後に言われると、色々と感慨深いものがありました。最初は舞台上の物語だったものが現実に、さらにはそれを観ている観客の私たちにまで広がっていく。物語は1人では紡げない。ともに紡ぐ仲間がいて、それをみまもる観客がいるからこそ紡がれ続けていくのだ。どちらか片方が続けることを願ってもうまくはいかない。そんな当たり前でありながら一番尊い奇跡を、この舞台を通し覚悟をもって真っ直ぐに伝えてくれたんだと思う。

 

話は少し変わるけれど、Aぇ! groupという存在にのめり込む中で、「THE GREATEST SHOW-NEN」という番組を知った時、本当に興奮したことを思い出す。舞台をきっかけにエンタテインメントの世界に足を踏み入れた人間としては、様々な劇団や演出・脚本家の方々と月1で舞台を作る、というのはそれはもう夢のような企画で。月1というのは正気の沙汰じゃないけれど、そのスピード感こそがAぇ! groupの勢いにもつながったのかな、とも思う。表現には技術が伴ってこそ。その表現のためのさまざまなテクニック=アビリティをこの「THE GREATEST SHOW-NEN」でAぇ! groupが培ってきたのだ、ということを改めて見せてもらった。

それから、過去のブログで

演劇的な視野の広さや瞬発力というのはバラエティにも通ずるものなんだなと、6人の連携で成り立つ振りオチのしっかりしたトークや佐野さんの爆発力のあるオチを見て学びました。

Aぇ! groupと推しについて - rit.

と書いていたら、パンフレットで草間リチャード敬太さんが同じようなニュアンスのことを述べられていて、答え合わせみたいでちょっと嬉しかったです。

 

舞台という場所は生で向き合う分、観客と舞台という場所でお互いに日々を積み重ねていっているなあ、としみじみすることが多いのだけれど、今回の作品はその部分がより際立っていたなと思います。今のAぇ! gropuだからこそ作り出せる空間を、今の私たちが受け止めて、そして共にこれから先の、終わりのない未来を思う。

どうかこれからも、どんな形であれ、ステージに立つことを選んだ、表現の仕事を選んだ6人を、客席から応援し、向き合っていけますように。ガチでネバーエンディングなストーリぃ!を、一緒に紡いでいけますように。

 

改めて、Aぇ! groupのみなさま、諏訪さん、上田さんはじめこの公演に関わったみなさま、全公演完走本当におめでとうございます!「THE GREATEST SHOW-NEN」がこれからも長く愛される番組でありますように。一視聴者として毎週楽しみにしています。